ビオンディ指揮 エウローパ・ガランテ w.ヴィヴィカ・ジュノー
2015-03-04


昨日(3月3日)はオペラシティでエウローパ・ガランテの演奏会を聞いてきました。まず、最近譜面が発見されて演奏されるようになった『テルモドンテのエルコレ(テルモドン川のヘラクレス)』序曲。ビオンディはレコードも出していますが、なかなか溌剌とした演奏。続いてヴィヴィカ・ジュノーが登場して、『悲しみの聖母(スターバト・マーテル)』。ニコニコ顔で登場して、でもイントロが鳴り出すととたんに真顔になる所はさすが。この詩は第三者が情景を描写するように書かれているんですが、ジュノーはマリアの心の中に入り込んだような歌いっぷり。鞭打ちの痛みを分かち合うかのような悲痛な歌声。そして、最後はマリアとキリストと観察者とが一体になったように悲しみを歌い上げていました。

次にオペラの超絶技巧のアリアを2曲。『忠実なニンフ』から「残酷な運命に打ちひしがれた魂は」と『グリセルダ』の「2つの風にかき乱され」。どちらもジュノーの十八番。これ聞きたくてやってきたお客さんも多かったんじゃないでしょうか。期待に違わぬものすごい歌声。特に『グリゼルダ』の「鰺叩(agitata da due venti)」はもう何と言ったらいいのか、ダ・カーポで返ってきてからの一節は、「いつもより5割多く回しております」って感じの超絶技巧。今はもう廃れてしまったメリスマの歌い回し、久々に堪能しました。アンコールに先日横浜で披露した『メッセニアの神託』から第3幕第7場のエピーティデのアリア「母が息子を拒絶して」。

後半はいつもの『四季』。つい数ヶ月前にオノフリの四季を聞いたばっかりですが、別に聞き比べを意識したわけじゃないけど、全く異なる演奏。オノフリは端正なんだけどツンツン尖っていますねぇ。リズムの切り込み、テンポの動かし方、強弱の対比、どれをとっても先鋭的。ビオンディは変幻自在。昔の演奏とはかなり違ってきて、「いかようにも料理してみせますよ」といった、余裕すら感じられる演奏。かつてのような疾走感とか、激しい切り込みは姿を消して、歌が全面に押し出された演奏。人間の呼吸に寄り添うかのような叙情すら感じました。アンコールに夏の第3楽章。今度はものすごい切れ味。でも聞き手の心を見透かすかのような、ピアニッシモも。それからもう一度冬の第二楽章。これはかなりロマンチックに料理。


ヴィヴィカ・ジュノーの歌声。『バヤゼット』の第1幕9場、イレーネのアリア「戦場の兵士の如く」。録音セッションの映像。
* Bajazet:Qual guerriero in campo armato[LINK]

『グリセルダ』の「アジタタ」。シュヴェツィンゲン音楽祭の映像。ロココ劇場でのコンチェルト・ケルンとの共演。ヘンデルやハッセも歌っています。
* Vivaldi, Handel & Hasse: Vivica Genaux at Schwetzinger festspiele[LINK]

おまけ。バルトリ姐ちゃんの「鰺タタ」。有名なヴィチェンツァのテアトロ・オリンピコでのリサイタル。
* Cecilia Bartoli Agitata da due venti Vivaldi[LINK]
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