佐藤俊介とオランダ・バッハ協会管弦楽団
2019-10-01


昨日〔9月30日)は浜離宮朝日ホールで佐藤俊介がリーダーを務めるオランダ・バッハ協会のアンサンブルを聴いてきました。佐藤は去年所沢でバッハの無伴奏6曲をサラッと弾いて、みごとな腕前と音楽性を披露してくれましたが、今回は手兵のオランダ・バッハ協会を率いて初めての日本公演だそうです。「バッハ協会」と言うだけあって、プログラムはバッハがメインなんですが、その周辺の作曲家まで交えて盛りだくさん。

まずバッハのヴァイオリン協奏曲ニ短調 BWV1052Rから第1楽章。BWV1052は現在ではチェンバロ協奏曲として扱われますが、原曲はヴァイオリンの協奏曲だったということがわかっています。でまあ、その原曲を復元した演奏。バッハの編曲モノってのは案外単純にできているものが多くて、おそらくこの曲もその類いじゃないかなって気がします。佐藤のヴァイオリンは冒頭からなかなかよく鳴っていました。通奏低音にファゴットも加えた編成も面白い。各パート1人ずつの最少の編成ですが、弦一人一人の音楽が生き生きとして、聞いている方も実に楽しい。2曲目はピゼンデルの「ダンスの性格の模倣」と題した8曲からなるメドレー。一つ一つは短い踊りの曲ですが、8曲ほぼ切れ目なく演奏すると、緩急だけでなくそれぞれの曲のステップに由来するリズムの変化が面白い。オーボエやトラベルソまで入って賑やかなメドレーでした。

次にヴィヴァルディの「海の嵐」。ヴァイオリンコンチェルトではなくて、フルートをソロに使った方の「海の嵐」。トラヴェルソ、ファゴット、ヴァイオリンが絡み合いみごとなアンサンブルを聴かせてくれました。フルートのマルテン・ロートって人がよく通る音色で鮮やかな技巧を披瀝。佐藤のソロも冴え渡っていました。

前半の最後にバッハの管弦楽組曲第1番ハ長調。これはバッハの従兄の曲じゃなくて正真正銘のセバスティアン・バッハの曲(笑)。有名な舞曲集ですが、ピゼンデルの曲同様、舞曲のリズムを生き生きと表現していました。2本のオーボエとファゴットのアンサンブルも鮮やか。佐藤の感覚なんでしょうか、自在な語り口を駆使したテンポやリズムの変化、アクセントや多彩なフレージングの妙は、心からに音楽の愉しみを満喫させてくれました。

後半最初は、これも復元もので、通常は2台のチェンバロのためのコンチェルトとして流布している曲ですが、かなり古くから行われている復元で、ヴァイオリンとオーボエのための一曲となっているハ短調の協奏曲BWV1060R。RというのはRekonstruktion(復元)という意味じゃないかと思います。エマ・ブラックという女流のオーボイストがちょっと調子が悪かったのか、かなり残念な演奏となってしまいました。楽器の調子が悪かったのかな???

続いてザクセン=ワイマール公ヨハン・エルンスト作曲のヴァイオリン協奏曲ニ短調Op.1-4という変わった曲。ヨハン・エルンストがオランダ留学から帰国した際に携えてきたヴィヴァルディなどの楽譜を、バッハは鍵盤楽器用にたくさん編曲しているんですが、終生ドイツから一歩も出なかったバッハにとってはこれが貴重な「イタリア体験」となったんだそうだ。それはともかく、ヨハン自身もイタリア様式で作曲したらしく、バッハは3曲ほどヨハンの曲もチェンバロに編曲しています。この日はオリジナルのヴァイオリン協奏曲としての演奏。バッハの曲からは通常聞こえてこない、イタリア風あるいはコレッリ風の緩急が自在に入れ替わるコンチェルトの妙味を堪能しました。


続きを読む

[屋上]
[緑化]
[西洋芝]
[バラ]
[花]
[音楽]
[古楽]
[ガーデニング]

コメント(全3件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット