新国立劇場:ワーグナー『タンホイザー』
2013-01-31


昨日(30日)は二国で『タンホイザー』を見てきました。舞台写真はここ[LINK]スタッフ&キャストはこのページ[LINK]ビデオもあります[LINK]

思えば2007年10月、若杉弘が二国の支配人になって最初のプロダクションが、このタンホイザーでした。あれから6年経ったんですね。ちなみに6年前の舞台写真も残っていました。こちら[LINK]

序曲の間にアクリル樹脂の板を円形に束ねた柱のようなものが、ニョキニョキ奈落の底からゆっくりとせり上がってきます。3幕とも基本的にこの柱に囲まれた舞台で物語が進行します。華やかなバッカナールのシーンに続いて、舞台奥から登場したアクリル樹脂の小山がカパッと開いて、ボッティチェッリの絵画さながらの情景になるんですが、ホタテ貝の中にだるまさんが転がっている。と思ったらだるまの正体はタンホイザー。このずんぐりむっくりのタンホイザーには、観客一同4時間あまり悩まされることになります。ヴェーヌスはエレナ・ツィトコーワ。およそヴィーナスには似つかわしくない容姿。前回のリンダ・ワトソンは思いっきりバストを強調した衣装でしたが、ツィトコーワでは強調のしようがないわけで、そこらへんは演出家もあっさりとあきらめた様子。ただし、彼女の名誉のために、歌は立派でしたよ。色気はまるでないけど。

でまあ、コロコロ太っただるまさんがヴェーヌスにうつつを抜かしているというヴェーヌスベルクのシーン、ちょっと滑稽な線を狙った配役かな。まあ、タンホイザーって歌劇はどこを切り取っても、歌に溢れているロマン派オペラですから、容姿はどうでもイイじゃないかって言えなくもないんだけど、このタンホイザーさん、声が出ていない。有名なヴェーヌス賛歌も勢いはいいんだが、それだけじゃなんとも…

第1幕後半、ワーグナーのト書きにヘルゼルベルゲを望む谷間とされている場面転換のシーン。東響にしては珍しくバンダのホルンが良かったね。ここらへんの歯切れの良さが、舞台をぐっと引き締めていたと思います。ここで男性歌手陣が全員登場するわけですが、領主のヘルマンが深く潤ったバスの声と、ノーブルな立ち居振る舞いでひときわ目立っていました。次にヴォルフラム。これも気品ある常識人という役柄にぴったり。

第2幕ではエリーザベトが登場するわけですが、それより何より劇場内に響き渡る合唱の迫力に圧倒されました。これは6年前と同じ。二国の合唱団はすごいですねぇ。エリーザベトは見目麗しく声量もたっぷり。ですが縮緬のようなビブラートが持ち味なのか、それともコントロールできないのか、ちょっと残念な歌唱。でも歌合戦のあと、怒れる人々とタンホイザーの仲を取りなす場面はなかなかよろしかったと思います。


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