何と言ってもこの日の白眉は後半の最初に歌われたプーランク。ピアノのカサールの好アシストもあって、みごとな歌だったと思います。特に5曲目のヴィオロンあたりは歌の世界に浸りきっていました。ラフマニノフのヴォカリーズは力強い歌い方でしたが、かつての透明で伸びやかな歌声とは打ってかわって、ビラビラのかなりきついビブラートがかかって、これはちょと違うんじゃないのって気がしました。その次のドビュッシー2曲はすばらしかった。これもきらめくようなピアノの音色にサポートされて、みごとな歌唱。「現れ」は輝くような色彩が空間を満たしているような気がしました。最後の『ラクメ』は、一人じゃフラワーデュエットはできないし、ドゥセと言えばやっぱり「鐘の歌」だよねと思いこんでいたら、大詰めの自殺のアリアでした。ちょっとストレスがたまったから、お口直しに「鐘の歌」の映像。
アンコールはドビュッシーの信じられないほど美しいメロディー『星の輝く夜』。それからヴェルレーヌの詩に乗せたフォーレの『マンドリン』。
はっきり言うと、私はドゥセの歌よりもカサールのピアノに聞き惚れていました。色彩豊かでキラキラと輝くような音色。楽譜の縦線を感じさせない、自由な時間のコントロール。ドビュッシーを得意としているそうなんで、リサイタルを聴いてみたいですねぇ。
浅里公三という人が書いた、ちょっとアクの強いプログラムの文章によると、ドゥセはオペラにはもう出ないんだそうだ。残念ですねぇ。これからリサイタル中心の活動をするそうだけど、もともとステージ上での演技力がずば抜けていた人だけに、芝居がないリート歌手として大成するかどうかはちょっと疑問。この日の歌からも音楽を通して何かを表現する意志が強く伝わってきたわけじゃないし、これからどうなっていくのかなぁ?
ドゥセの全盛期のオペラ。ストラヴィンスキーの『夜鳴きうぐいす』の映像がまだ残っていました。
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