桑形亜樹子チェンバロ・リサイタル
2016-01-10


昨日(1月9日)は茗荷谷のラリールで桑形亜樹子のチェンバロを聞いてきました。「対位法〓宇宙の摂理〓」というシリーズの4回目(最終回)で、プログラムには「祝 ヨハン・ヤーコプ・フローベルガー生誕400年 1616-1667 vs. ヨハン・ゼバスティアン・バッハ 1685-1750」というサブタイトルが踊っています。

フローベルガー・イヤーと言ってもまあ、知る人ぞ知るってことですけど、すばらしい鍵盤曲をたくさん作曲した人です。対位法のシリーズですから、もちろんフローベルガーって人もリチェルカーレとかカプリッチョのような対位法プロパーの作品も数多く書いています。でもやはり面白いのは組曲。アルマンド、ジーグ、クーラント、サラバンドという並びはどことなく古風な雰囲気が漂いますけど、堂々として、しかも華やかなサラバンドで締めくくるのもまた一興。でも好きなのはアルマンド。この日はラメントやらトンボー系の陰々滅々だったり感情の起伏が大きい曲は演奏されませんでしたが、それでもフローベルガーのアルマンドは時間の均一な流れに棹さす如く、後ろ髪を引かれる瞬間があったかと思うと、突然脇目も振らず走り出して、でもすぐに立ち止まってしまうような不思議な舞曲(?)。演奏家がどれだけ自由に時間をコントロールできるかが聞き所と言えるでしょう。

まずFbWV(フローベルガー作品番号)402のリチェルカーレ。かなり厳格な4声の作品。それからFbWV 607の組曲。ジーグはもちろん、アルマンドもそしてサラバンドでさえ対位法的な音の対比ないしは、旋律の対比が面白い。続いて弾かれたバッハのアルマンド2曲(リュート組曲ホ短調、フランス組曲第4番)と比べると、曲の作りや響き方がまるで異なっているのがわかります。次にメラー手稿譜から組曲変ホ調。バッハのカプリッチョの写しが載っている楽譜集ですよねぇ。フローベルガーもバッハ一族に知られていたというわけか。(追記:Moller Manuscriptにフローベルガーが入っているというのが、どうも腑に落ちない???)ふむふむ。次にFbWV 502のカプリッチョ。3つ4つのパートからできてるフーガですが、リズムやテンポの対比もなかなか面白い。FbWV 412のリチェルカーレは嬰ヘ調となっていますが、音符一つ一つにシャープが付いている感じ。かなり珍しい調子なんですが、エアコンが効かない猛暑の室内で、チューニングがどんどん崩れていったためか、さほど違和感なく聞けました。前半の最後はバッハのフーガの技法からコントラプンクトゥス9。一人で演奏するのは大変でしょうねぇ、でもそんな雰囲気は微塵も見せることなく、爽やかにオクターブの跳躍を決めていました。

いつもはチケットを持っているとそのまま入れたんですが、今回は30分も前に到着したのに当日精算の人々の列の後ろに延々と並ばされて、やっと中に入ったらとんでもなく狭苦しい席しか残ってなくて、おまけにこの暑さ。かなり往生しました。前半で帰ろうかなとも思ったんですが、まあ何事も我慢が肝心。後半はフローベルガーのトッカータFbWV 108。自由な音階的パッセージがひとしきり走り回った後、対位法的・重層的部分に入り、それが次第に切迫してクライマックスを築く構造は多分フレスコバルディから受け継いだものなんでしょう。走句と対位法の対比、そして比較的緩く作られた対位法部分の盛り上がりは、いつ聞いてもワクワクします。次にバッハの4つのコラールとコラール編曲。初めて聞く曲でよくわからないけど、3番目のBWV 722が面白い編曲だったかな。これはまあ、対位法音楽の頂点と言ってもいいんでしょう。


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